大企業の通常運転を守るために、川下の職人が止まっている

query_builder 2026/07/25
日常的な事

暑い中大変な時期ですが、そもそも材料が止まってたらそりゃまずいでしょ

なんか、ずっとおかしいと思っていました。

少し前から騒がれていた、ナフサがなくシンナーなどの材料不足。

材料屋さんに聞いても、

「入ってこないんです」

「メーカーから出荷されないんです」

そんな話ばかりでした。

最初は、原材料が足りないのか。

工場で何かトラブルがあったのか。

輸送の問題なのか。

そう思っていました。

ところが、やっぱりメーカー側が流通量を調整していたらしい。

詳しい事情は外からでは分かりません。

ただ、結果として市場に材料が出てこなかった。

現場では、それがすべてです。

材料がなければ、仕事ができません。

塗れない。

仕上げられない。

工事が終わらない。

次の工程にも進めない。

そして最終的には、家の受注や工事そのものまで止まってしまう。

メーカー側の言い分も、分からなくはありません。

大きな企業であれば、たくさんの社員を抱えています。

社員の給料も守らなければならない。

休みも確保しなければならない。

工場を無理に動かして事故が起きれば、それこそ大問題です。

流通量を調整してでも、会社を通常運転させたい。

社員を守りたい。

企業としては、当然の判断なのかもしれません。

でもな。

その通常運転を守った結果、川下にいる俺たちは通常運転できなくなっているんです。

材料が来なければ、職人は仕事ができません。

仕事ができなければ、売上になりません。

売上にならなければ、給料も払えません。

俺たちは、その材料を使ってご飯を食べています。

メーカーから見れば、出荷量を少し調整しただけかもしれない。

でも現場にとっては、

今日の仕事がなくなる。

工事が止まる。

お客さんに謝る。

予定を組み直す。

職人を遊ばせる。

会社の資金繰りが悪くなる。

そこまでつながっています。

しかも、一度上がった材料の値段が、元に戻ると思いますか。

俺は戻らないと思っています。

コロナ禍以降、いろいろな物の値段が上がりました。

木材。

合板。

金物。

断熱材。

塗料。

燃料。

運送費。

電気代。

何でも上がっています。

一時的な値上げだと言われたものもありました。

供給が安定すれば落ち着くと言われたものもありました。

でも、実際に元の値段まで下がったものが、どれだけあるのでしょうか。

ほとんどありません。

材料が不足する。

値段が上がる。

供給が戻る。

それでも値段は戻らない。

これが何度も繰り返されています。

その値上げ分は、最後には誰かが負担します。

もちろん、お客さんに価格転嫁できればいい。

でも家やリフォームの金額が上がり続ければ、工事を諦める人も増えます。

受注が減れば、工務店も苦しくなる。

工務店が苦しくなれば、職人の手間を簡単には上げられない。

材料費は上がる。

運送費も上がる。

社会保険料も上がる。

働き方改革にも対応する。

それでも職人の給料は、なかなか上がらない。

日本では「失われた30年」と言われています。

でも、現場にいる感覚では、まだ終わっていません。

このままなら、

「失われ続ける40年」

になるんじゃないかと思っています。

大手企業に勤めている人が悪いわけではありません。

休みを取ることも大切です。

残業を減らすことも必要です。

安全に働くことも当然です。

問題は、誰かの働き方を守るための負担が、立場の弱いところへ順番に押し出されていることです。

大手企業が価格を上げる。

流通量を調整する。

商社が価格を上げる。

販売店も価格を上げる。

最後に受け取るのは、工務店や職人です。

ところが、工務店や職人は、お客さんに同じだけ価格転嫁できるとは限りません。

「高い」

「前はもっと安かった」

「そこまで予算がない」

そう言われれば、どこかを削るしかない。

会社の利益を削る。

職人の手間を削る。

自分たちの給料を削る。

休日を削る。

結局、一番下にいる人間が吸収しています。

働き方改革そのものが悪いとは思いません。

ただし、制度をつくるなら、現場の最後まで見てほしい。

工場の社員が休めるようになった。

大企業の残業が減った。

それだけを見て、社会が良くなったと判断してはいけない。

その裏で、材料を待つ職人がいる。

納期に追われる工務店がいる。

休日に遅れを取り戻す人がいる。

値上げをお客さんに言い出せず、利益を削っている会社がある。

日本のインフラや建物は、最後は現場で働く人間が支えています。

道路も。

水道も。

電気も。

住宅も。

工場も。

学校も。

保育園も。

災害が起きたときに直すのも、結局は職人です。

ところが今、その職人が減り続けています。

若い人が入ってこないと言われます。

当たり前です。

材料費は上がる。

責任は重くなる。

暑さは厳しくなる。

休みは取りづらい。

それなのに、給料だけは簡単には上がらない。

これで若い人に、

「職人になれ」

「日本の未来を支えてくれ」

と言っても、無理があります。

このまま職人不足が進めば、将来はお金を出しても工事をしてもらえない時代になります。

壊れたから、すぐ直してほしい。

雨漏りしたから、来てほしい。

エアコンが壊れた。

水道が漏れた。

屋根が飛んだ。

でも、来られる職人がいない。

材料もない。

工事日程も空いていない。

そんなことが、珍しくなくなると思います。

日本は、ある日突然衰退するのではありません。

直せる人がいなくなる。

つくれる人がいなくなる。

維持できる人がいなくなる。

そうやって少しずつ、生活の当たり前が崩れていく。

大企業が悪い。

メーカーが悪い。

働き方改革が悪い。

そんな単純な話ではありません。

ただ、上流だけを守る仕組みでは、川下が持ちません。

川下が持たなければ、最後は上流も困るはずです。

材料をつくっても、それを使う職人がいなくなる。

商品を開発しても、それを施工する会社がなくなる。

そんな未来にしてはいけない。

メーカーにも社員がいる。

俺たちにも社員がいる。

メーカーの社員にも生活がある。

職人にも生活がある。

守るべきなのは、どちらかだけではないはずです。

材料が一本入ってこない。

現場から見れば、それは小さな問題ではありません。

一人の職人の仕事が止まり、

一つの会社の売上が止まり、

一軒のお客さんの工事が止まる。

その先まで、もう少し想像してほしい。

現場は、余った時間で動いているわけではありません。

材料がなくても、給料日は来ます。

支払日も来ます。

お客さんとの約束の日も来ます。

止めるなら、止める理由を伝える。

不足するなら、早めに知らせる。

流通を調整するなら、その影響を受ける会社にも目を向ける。

それくらいは必要なんじゃないでしょうか。

大きな企業の通常運転を守ることは大切です。

でも、そのために日本を支えている職人の仕事を止め続けたら、いずれ本当に取り返しがつかなくなる。

困るのは、俺たちだけではありません。

最後に困るのは、日本で暮らす全員だと思います。



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